どうも、ぐっさん(@goodsun_30)です。
トップリーグの閉幕とスーパーラグビーの開幕の間にずっと読みたかったラグビー本を読んでみました。
2013年に刊行された『ラグビー「観戦力」が高まる』。スポーツライターでラグビー経験者でもある斉藤健仁さんが書いた本です。
ラグビーというルールがわかりにくいスポーツをかみ砕いて説明してくれています。僕は一応ラグビー経験者で、ラグビーをよく観ているんですが、そういう人のためにも戦術や戦略などわかりやすく説明してくれていて、とてもためになりました。
ラグビーの前提は「陣取り合戦」と「立ってプレーすること」
まずこの本に書いてあるのは、ラグビーの前提について。
「陣取り合戦」、「立ってプレーすること」がラグビーの前提です。試合を観るにあたって、ルールを覚えることは大事なことです。しかし、ラグビーのルールに関していえば、覚えるのはアバウトでいいと思います。トップリーガーは違うと思いますが、多くのラガーマンはルールを事細かに理解しているわけではありません。はっきりいってなんとなくです。なので、ルールは簡単なもの(ノッコン、スローフォワードなど)だけ覚えるということにして、まずはこの2つの前提を頭に入れて、大局的にラグビーを観たほうが面白いはずです。
陣取り合戦
ラグビーの試合を観ているとキックの応酬になることがたまにあります。BKが蹴り合ってFWは右往左往…僕もラグビーを始めたころはいったい何をやっているんだと思っていましたが、あれは少しでも相手陣に入り込むためにやっているものです。
ラグビーは前にボールを放ることができないため(キックは前に蹴っていい)、一気に前に進むことはなかなかできません。試合のレベルが上がってくるとディフェンスが強固になるため、なおさら難しくなります。
そのため、できるだけ相手陣に入ってプレーし、トライされる確率を減らし、トライする確率を上げることが大切というわけです。
立ってプレーすること
ラグビーは寝た状態でプレーすると反則を取られます。正確に言うと、手をついたり、膝立ちなど、自分の足で自立していないと判断されれば反則を取られます。
また、寝たままでプレーに関与できない人数が増えると、それだけ数的に不利な状況になるということ。
そのため、ラグビーは立ってプレーすることが重要というわけです。
この本は、まず、この2つの前提から入り、「トライ」「タックル」「セットプレー」など、ラグビーの基本となるプレーやルールの説明をしていきます。
初心者の人にとってはわかりやすくまとめられていると思いますが、ラグビーを知っている人にしてみると退屈な部分かもしれないので、この辺りは読み飛ばしてもいいと思います。
「シェイプ」と「ポッド」について説明してくれている
僕はJSPORTSでよくラグビーを観るんですが、たまに解説者が「シェイプ」とか「ポッド」(どちらも戦術)とかいう言葉を使うことがあります。なんとなくの意味は分かっていたんですが、この本では図と文章でわかりやすく説明されているので、理解が深まりました。
簡単に言うと、「シェイプ」はSHとSOの横にFWを配置して、順目順目に連続攻撃する戦術で、エディーJAPANにも採用されたものです。
対して「ポッド」は、人よりボールの方が動くのが速いという考えのもと、2、3のユニットを作ってボールを左右に動かす戦術です。
現在のラグビーはもっと発展していて、シェイプ、ポッドの境は不明瞭になりつつあるなんて話も聞きますが、この二つの戦術を知っておくとラグビーの理解力が変わってくると思います。
エディー・ジョーンズが大切にしていたのは“状況判断”
第4章には「日本ラグビーを見極める」と題して、当時ヘッドコーチだったエディー・ジョーンズのインタビューがいくつか書かれています。
その中で何度も出てきたのが「状況判断」という言葉です。
ラグビーは、天候や相手のディフェンス、レフリーなど、さまざまものから影響を受けるスポーツです。だからこそ、その時の状況に合わせてパス、キック、ラン、どれで攻めるかを常に判断をする必要がある、と。そして、日本人はその判断をするスキルが低いとも言っています。
たしかに、日本のラグビーは海外に比べて、凝り固まったプレーが多いという印象があります。その時の状況ではなく、このエリアだからこう、と決めつけてプレーしているような…。エディーはそうではなく、もっと自分で考えてスペースを見つけて、たとえ22mラインの内側であってもトライを取りに行くプレーをしてほしいと言っていました。
エディーJAPANが南アフリカに勝つために何をしてきたのかもわかる
2015年のラグビーワールドカップでエディーJAPANは南アフリカを破るという大金星をあげました。この本は2013年に刊行されたものですが、エディーJAPANが南アフリカに勝つために何をしていたかということにも触れられています。
エディーは、身体は小さいけれどスピードがある日本人の特性に合わせてシェイプを採用し、アタッキングラグビーを掲げました。また、身体作りにも力を入れ、JAPANが強豪国に劣っていたセットプレー(スクラム、ラインアウト)を安定させ、アタッキングラグビーを加速させました。ときには4部練をこなしたこともあったそうです。
もうひとつ、リンケージといって、SHとSOのシェイプを連携させ、攻撃オプションを増やして相手ディフェンスを惑わす戦術も作り上げていきました。
こうした強化が実を結び、南アフリカに勝てたというわけです。あの勝利は決してまぐれではないのです。エディーやその他の指導者の力、選手たちの努力があったからこそ成し遂げられた必然の勝利だったのです。
ということで、今回は『ラグビー「観戦力」が高まる』の書評を書いてみました。
初心者からラグビーをよく観る人まで、すべてのラグビー観戦者のためになる本だと思います。この本を書いた斎藤さんはもう一冊、『ラグビーは頭脳が9割』という本も書いているので、そちらも読んでみようと思います。
ちなみにラグビーの戦術についてもっと知りたい場合は、この本にも協力している井上正幸さんのブログを読んでみるといいかもしれません。
僕も以前読んでいたんですが、途中で何が書いてあるかわからなくなって挫折してしまいました。ですが、この本を読んでラグビーに対する理解力が上がったと思うので、もう一度読んでみたいと思います。
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